1983年1月半ばの寒い日のことでした。レンガ用の良質な土を産出する、イギリス・ロンドン郊外の採土場に出かけた化石収集家のウォーカー氏は、そこから奇妙な恐竜の骨を掘り出しました。それはワニに似たあごや歯と太い腕を持っていて、親指の先端には、長さ30メートルにも達する爪が生えていました。発掘現場で、アラン・チャリグ博士がよく調べると、胃があったと思われる辺りに、消化液で半ば溶けかかった魚のウロコの化石がどっさりあることが分かったのでした。それは、この恐竜が飲み込んだ食べ物の残骸とあたるわけです。アラン・チャリグ博士は、それこそ一億年以上前に生息していた、世界ではじめての魚食性の恐竜であることを知って、びっくりしたのでありました。
そして、「おもおもしい爪」を意味するバリオニクスと名付けたのです。このバリオニクスはヒグマや、アメリカやカナダの山岳地帯に生息する巨大な灰色熊グリズリーのように、きっと大きな爪を用いてたくみに魚を捕らえ、食べていたのでしょう。
今から1億年前のロンドン近郊の川には、全長5メートルもあるバリオニクスを、養えるだけの魚が群れていたことを意味しているのです。それは現在の南アメリカ・アマゾン川に生息している淡水性のニシン科の魚、ピラルクーやアロワナに近縁の魚や大型の肺魚であったのではないかとされています。